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台本名 :『じゃじゃ馬勇者どもっ』

台本著者:ナウス・リー

登場人数:9 ♀3 ♂2 どちらも可が4

台詞数 :

 

・この台本は

※※場面のイメージ

 (※)声のイメージ

【】SE指定

《》場所

 

―――――――――――― 登場人物一覧  ――――――――――――

 

ソーダライト・ディセンバーフォウス (ソーダ)(17歳 / 性別♀ )

 

水色の短髪で、小柄な少女。露出が多めな、濃紺の鎧を着ている。

幼さの残る顔立ちをしており、澄みきった青い瞳を持つ。少女は細身の長剣を腰に付けている。

白い肌をしているがかなり活発。

元気な自称勇者の少女。

 

ビクス・バイト・レッドベリル (ビクス)(17歳 / 性別♀ )

 

腰まで伸びた真紅の髪を持ち、漆黒のドレスを着た少女。王族。

裏と表の性格がある。

普段はおっとりとしていて自由奔放。

だが、剣を持つと魔王のような恐ろしい覇気を発する。口調もまったく異なり、ハキハキと喋る。切れ長の目をした凛々しい顔立ちだとハッキリとわかる。

 

ロード・クロサイト (ロード)( 20歳 / 性別♂ )

 

赤髪紅眼の普通の人物。作中、唯一の常識人にして一般的な力の持ち主。ビクスとは長年の付き合い。

黒い服装を好む。

真面目であるがゆえにソーダとはなかなか反りが合わない。

 

魔王(読み方:まおう / 30後半~(見た目) / 性別♀ )

 

真紅の髪を持つ女性。

豊満な身体をしており、威厳もある。

 

竜(読み方:りゅう / ?歳 / 性別♀♂どちらでも )

 

威厳の塊とでも言うような存在。

ちなみに魔王とは旧知の仲。

 

ヴォルケノス (ヴォル)(30後半~(見た目) / 性別♂ )

 

炎を纏った剣士の姿をしている。身長は2メートルを超えており、大柄。

背丈くらいの大剣を常に携えている。

硬い口調でしゃべる。

 

エスケプル(エスケ)

やや卑屈な性格。

 

四天王1

特になし

 

四天王2

特になし

 

―――――――――――― 以下本文 ――――――――――――

 

 

タイトル『じゃじゃ馬勇者どもっ』

 

 

 

・チャプター①

※広い室内※

 

 

 

【走る音】

【扉を開く音(強め)】

 

ロード「姫様ぁ! ビクス姫様! 大変です! 国王が連れ去られました!」

 

ビクス「お、お父様が!? ど、どうして? いつ?」

 

ロード「今さっきです! 完全に不意を突かれてしまいました……! 王は私の目の前で、魔物に連れ去られてしまったのです! 魔物は自らを、魔王の手先だと言っておりました! 連れ去る理由は魔物自身もよく分かっていないようでしたが……」

 

ビクス「そ、それは大変です! 一大事です! 今すぐ助けに行きましょう!」

 

ロード「かしこまりました! 今すぐに……って、姫様が行くのですか!?」

 

ビクス「当然です! わたくしがお父様を、お助けしなくては!!」

 

ロード「ちょっと、姫様! 待って下さい! せめて、一通りの準備を! 救出部隊や護衛部隊の手配なども……!」

 

ビクス「そんな暇はありません! さあ、行きますよ!」

 

ロード「ちょっと、姫様ぁ!」

 

ビクス「さぁ、冒険の始まりですっ! 楽しみですっ!」

 

 

 

・チャプター②

※草原※

 

 

 

【歩く音】

 

ビクス「あの……、ロード……」

 

ロード「はい、姫様。どうかしましたか?」

 

ビクス「この先、どこに向かえばいいのでしょう……?」

 

ロード「えっ!? 姫様、場所を知っていて旅立ったのではないのですかっ?!」

 

ビクス「実は、わたくしたちが今どこを歩いているのかもわからなくて……」

 

ロード「姫様! だから言ったではないですか! なんの準備も出来てないのに出かけるからこうなるんですよ!」

 

ビクス「その、勢いが重要かと思いまして!」

 

ロード「勢いだけでなく、ちゃんとお考えを持って行動を始めてください!」

 

ビクス「だって、だってぇ……」

 

ロード「だってじゃありません!!」

 

ビクス「うぅ……、ぐすっ、そんなに強く言わなくたっていいじゃない……」

 

ロード「いーえ、ダメです! 今日は強めに言わせて頂きます! ほら! 一旦お城に戻りますよ!」

 

ビクス「やだー! お城に戻るのはやだー!」

 

ロード「ほら、わがまま言わないで、戻りますよ!」

 

ビクス「やだー! お父様たすけるー! もっと外の世界を知りたいのー!」

 

ロード「もう、姫様ぁ……」

 

【剣を引き抜く音】

 

ソーダ「ちょっとちょっとちょっとぉ! そこの悪漢! 女の子を泣かして何が面白いの!」

 

ロード「ん? なんだ、お前は?」

 

ソーダ「ふふん! アタシの名前はソーダライト・ディセンバーフォウス! 人はアタシを! 勇者と呼ぶわ!」

 

ロード「はいはい、その勇者様が何の用だって?」

 

【剣を構える音(シャキンッ、など)】

 

ソーダ「悪漢のくせに生意気ね! アンタなんか、一瞬で瞬時に瞬殺なんだから!」

 

ロード「あーもう、妙な奴に絡まれてしまったな……」

 

ビクス「かっ」

 

ロード「姫様?」

 

ビクス「かっこいい……!」

 

ロード「ちょっと、姫様!?」

 

ビクス「あ、あの! 勇者ってホントですか!?」

 

ソーダ「お、おう、一応。自称だけど勇者よ」

 

ビクス「かっこいいです!! ロード! この人を雇いましょう!」

 

ロード「何を言ってるんですか! こんな素性の知れない奴と一緒になんて無理ですよ! 魔王城に向かう前に、死んでしまいますよ!」

 

ソーダ「あらあらあら? アンタらも魔王城を目指してんの?」

 

ビクス「はい! 魔王城には囚われのお父様がいるのです!」

 

ソーダ「……普通、逆じゃない? 若い娘が連れて行かれるんじゃないの?」

 

ロード「まぁ、理由はわからんが、本当にそういうことなんだ……」

 

ソーダ「ふーん。まぁ、ここで会ったのも何かの縁ね。アタシの仲間にしてあげるわ!」

 

ビクス「やったー! ということで、わたくしたちも勇者一行ですね!」

 

ロード「姫様……そいつは自称勇者って自ら言ってしまうくらいに頭のおかしいやつですから、あんまり関わらないほうが……」

 

ソーダ「おい、その首を撥ねて黙らせようか?」

 

ビクス「あっ、申し遅れました! わたくしはビクス・バイト・レッドベリルです! こっちは従者のロード・クロサイトです!」

 

ソーダ「ビクスちゃんねっ! よろしく! アタシのことはソーダでいいわ」

 

ビクス「はいっ! ソーダちゃん、よろしくお願いします!」

 

ソーダ「えへへー」

 

ロード「なんでお前が照れてんだよ」

 

ソーダ「うっさい! 従者のくせに!」

 

ビクス「さぁ! 改めて、魔王城に出発です!」

 

ソーダ「おー! しゅっぱーつ!」

 

ロード「はぁ……不安しかない……」

 

 

 

・チャプター③

※草原※

 

 

 

【歩く音】

 

ソーダ「ねぇねぇ、ところで魔王城ってどこにあんの?」

 

ロード「お前っ、知らないのかっ?!」

 

ソーダ「ふっ、当然よ。知ってたらこんなところでウロウロしてないわ」

 

ロード「誇らしげに言うな、エセ勇者!」

 

ソーダ「うっさい! エセはやめろ!」

 

ビクス「うーん、それは困りました……」

 

ソーダ「うーん。さて、従者。これからどうしますか」

 

ロード「どうしますか、じゃあないだろ。少しは自分で考えてみろ」

 

ビクス「ロード、これからどういたしましょう?」

 

ロード「まずは魔王城を目指すために、街を転々と移動しまして情報収集をしましょう。その際に色々と装備も整えまして……」

 

ソーダ「ちょっとちょっとちょっと! アタシと対応がえらく違うんだけど!」

 

ロード「当然だ! 身分をわきまえろ!」

 

ソーダ「くっ、えっらそーにぃ!」

 

ロード「姫様。自分の知っている情報では、少なくとも魔王は海を渡った先にある、西の大陸にいるはずです。ただし、西の海岸にたどりつくまで、5つの街を経由しなくてはなりません」

 

ビクス「はぁ~、長旅になりそうですね」

 

ソーダ「ちまちまとめんどくさいわねぇ。一気にガツーンと行っちまおう!」

 

ロード「一応聞いておくが、どうやって?」

 

ソーダ「この近くにドラゴン住んでるの知ってるでしょ? あいつに頼めばいいじゃない」

 

ロード「英知司る竜のことか? 馬鹿を言え、あの誇り高い竜がそう簡単に人間の言うことを聞くものか。下手をすれば、怒りを買うことになるんだぞ?」

 

ソーダ「どうってことないわよ。だって数年前にアタシ一人で対決して、勝ったんだもん」

 

ロード「は?」

 

ソーダ「額の辺りに一撃かましてやったもの」

 

ビクス「ソーダちゃんすごいです!」

 

ソーダ「でしょでしょ? すごいでしょ?」

 

ロード「いや、姫様。こんな話、本当のわけが……」

 

ビクス「よしっ! それでは、英知司る竜の元へ急ぎましょう!」

 

ロード「ひっ、姫様! さすがに今回は……」

 

ビクス「ロードは頭でっかち過ぎます! ソーダちゃんを少し見習うべきです!」

 

ロード「姫様ぁ……」

 

ソーダ「ぷぷー、言われてやんのー」

 

ロード「くっ、うるさい!」

 

 

 

・チャプター④

※洞窟前※

 

 

 

ソーダ「さーて、着いた着いた、着いたっと!」

 

ビクス「ふぇー、洞窟の入口、おっきいですね」

 

ロード「ここが、英知司る竜の祠……」

 

ソーダ「ほらほらほら、早く行くよ! おいてくよ!」

 

ビクス「あー、ソーダちゃん待ってー!」

 

ロード「あっ、姫様! 足元に気を付けて!」

 

【走る音】

※洞窟内に入る※

【歩く音】

 

ロード「ところで、竜はどのくらいの大きさだったんだ?」

 

ソーダ「あん? あー、あの時は……、アタシよりちょっとだけ、でかいくらいだったかな? まぁ、あれから成長してるだろうし、三人くらい、余裕で乗せられるでしょ! もし、何かしらの試練を与えられたとしても! アタシのことを覚えてるかもしれないし、苦労せずになんとかなるかもよ?」

 

ロード「……こいつに付いて行って、本当に大丈夫なのか……? いや、絶対ダメだろうけど……」

 

ソーダ「なんか言った?」

 

ロード「別に……」

 

 

 

・チャプター⑤

※洞窟内※

 

 

 

【風の音】

 

ロード「あの、ソーダさん?」

 

ソーダ「はい、なんでしょう? ロードさん」

 

ロード「過去に竜と戦って額に傷をつけ、一人で奴に勝った。そうですね?」

 

ソーダ「ええ。あの時の戦いは烈しいものでした。今でも鮮烈に思い出せます」

 

ビクス「ふぇー。おっきい竜ですねぇ。お山と勘違いしちゃいますね」

 

ロード「あ、あんなのにどうやって勝ったんだよ、ソーダ!」

 

ソーダ「アタシが戦った時は同じくらいの背丈だったんだけど……。いやー、ちょっと見ない内に成長するもんだねぇ。お姉さんもびっくりだよ」

 

ロード「お前、やっぱり嘘なんじゃないか!? 本当は戦ってないんだろ!」

 

ソーダ「いやいやいや! ほら、額のところにちょろっと斜めに線が入ってるじゃん? あれはアタシが付けた傷だって! 絶対そうだって!」

 

ロード「あんなもん、竜が自分で引っ掻いたってできるだろうよ!? お前、あの竜が自分のことを覚えているかもって言っていたよな? ちょっと交渉してきてくれよ!」

 

ソーダ「むりむりむり! アタシのことなんて覚えてないわよ、きっと。あ、もしかしたら別竜なのかもね。竜違いしちゃったのかもね。よしよしよし、こうなったら覚悟を決めるしかないわ! 頑張って来てね、二人共!」

 

ロード「行くとしてもお前が先陣をきって行け!」

 

ソーダ「やだ!」

 

ビクス「二人共、ケンカはやめなよぉ」

 

竜「岩陰に隠れている人間共。我に何の用だ?」

 

ソーダ・ロード・ビクス「あ……」

 

竜「姿は隠せても、気配が漏れ出ている。三人共、早く出てこい。それとも、岩ごと消されたいのか?」

 

ビクス「お呼びのようですよ?」

 

ソーダ「アタシはお呼びではないかなぁ」

 

ロード「三人って言われてんだ。大人しく行こうか、ソーダちゃん」

 

ソーダ「マジカンニン……」

 

【歩く音】

 

ソーダ「いやー、どもども、どーも! おひさしぶりー!」

 

竜「んん?」

 

ソーダ「うっ、やっぱダメっぽい」(※ひそひそ話し)

 

ロード「知るかっ! もう後戻りはできない!」(※ひそひそ話し)

 

ビクス「おっきぃ……」

 

竜「ソーダではないか。これは珍しい顔を見たものだ」

 

ソーダ「あらあらあら? アタシのこと、覚えてんの?」

 

竜「我の額に傷を付けた者を、いかに忘れろというのか」

 

ソーダ「おお、ほらほらほら! 言った通りだったじゃない!」

 

ロード「あ、ああ。これは素直に驚いた。本当だったんだな」

 

ソーダ「じゃあさ、じゃあさ。アンタに頼みごとがあるんだけどさ、またアンタと戦わなきゃいけないの?」

 

竜「冗談はよせ。お前は勝った証として、我の血を飲んだではないか。竜の血を飲んだ人間との闘争など、こちらから願い下げだ」

 

ソーダ「えっ? 竜の血ってそんなにやばいの?」

 

竜「ソーダ、お前は知らずに飲んだのか……呆れた奴だ」

 

ソーダ「えっ、えっ、アタシ、ヤバい? ねぇ、ビクスちゃん! アタシ大丈夫?」

 

ロード「いっ、いきなり取り乱すなよ……」

 

ビクス「えっ、えっ、よく分かりませんがソーダちゃんは出会ってからお変わりないですよ?」

 

ロード「といっても、出会って一日と経っていませんが……」

 

竜「まぁ、そのことについてはひとまず置いておけ。頼み事とは何なのだ?」

 

ソーダ「アタシ、ヤバい……?」

 

ロード「あー……、ソーダがちょっとヤバいことになってるから代わりに言うが、魔王城まで連れて行って欲しいんだ。頼めるだろうか?」

 

竜「魔王城? 一体そんなところへ、何をしに? 魔王は――」

 

ビクス「お父様が連れ去られてしまったのです! どうしても助けたいのです! どうか、お力を貸してはいただけないでしょうか!」

 

竜「フム……? まぁ、よかろう。では背に乗れ。一日で連れて行ってやる」

 

ビクス「やったぁ!」

 

ロード「ソーダ、今回は助かった。ありがとう」

 

ソーダ「アタシ。ヤバいのか……?」

 

ロード「お、おい」

 

ビクス「おーい、ソーダちゃーん! 戻ってきてー!」

 

竜「やれやれ……」

 

 

 

・チャプター⑥

※魔王城前※

 

 

 

【竜の着地音(ズン……というような音)】

 

竜「着いたぞ。ここが魔王城だ」

 

ロード「おお! すごい……、本当に一日足らずで……! 助かった! ありがとう!」

 

ソーダ「ふぁ~あ。やっと着いたの?」

 

ビクス「う~ん、あっ、おはようございます」

 

ロード「あのー……、姫様たち、もう少しやる気を出してほしいのですけど……」

 

ソーダ「だって途中で飽きちゃってさぁ」

 

竜「はぁ……、緊張感のない奴等だな……」

 

ヴォル「なんと、竜を従えているとは……。貴様ら、並みの使い手ではないな」

 

ロード「むっ!? 何者だっ!?」

 

ヴォル「我は魔王軍四天王が一人、炎帝のヴォルケノス! 貴様らが人間の王を取り戻しにきた連中だな?」

 

ロード「四天王……?! ということは、いきなり敵の幹部かっ!」

 

ソーダ「そんな肩書き知ったこっちゃないわよ! ようは魔王とやる前の前座ってことでしょ?」

 

ロード「おい、ソーダ! 早まるな! 相手は魔王の、側近中の側近だぞ!?」

 

ソーダ「だから何! どうせやらなきゃならない相手なんだろっ! ここでぶちのめしておけば、あとが楽じゃない!」

 

ヴォル「ふっ、面白い! その減らず口、我が大剣にて切り裂いてくれる!」

 

ソーダ「ふん、アタシの剣技に腰を抜かすなよ! 一瞬で瞬時に瞬殺だぁ!」

 

【剣を構える音(カチャッ、チャキッ、など)】

 

ソーダ「はああああ!」

 

ヴォル「ぬうううう!」

 

【剣戟の音(キンッキキン、など)】

 

ビクス「すごい、どちらも負けてないっ!」

 

竜「いや、この勝負……!」

 

【剣が激しくぶつかる音(ガキィン、など)】

 

ソーダ「くぅっ!?」

 

竜「僅かにソーダの筋力が追いついていない。奴の腕力に負けている……! このままではまずいぞ」

 

【剣を弾かれる音(ギャン、ギィン、など)】

 

【倒れるような音(ドッ、ドサッ、など)】

 

ソーダ「きゃあっ!?」

 

ロード「ソーダ!?」

 

ヴォル「ふんっ! 勝負あった!」

 

ビクス「ソーダちゃんっ!」

 

ロード「あっ! 姫様っ、ダメです!」

 

ビクス「やあああああ!」

 

【剣を受け止める音(ガギィン、ガン、など)】

 

ヴォル「ほう……!」

 

ロード「しまった……! 姫様が剣を抜いてしまわれた……」

 

竜「どうした? なかなかの太刀筋だったが、なにが不味いのだ?」

 

ロード「姫様は、剣を抜くと……剣を抜くと……!」

 

ビクス「……私の眼前で、大切な親友に傷をつけようなどと……貴様、覚悟はできているのだろうな?!」

 

ヴォル「ぐぅ、なんて圧力……!」

 

ロード「人が変わってしまうんだ……」

 

竜「たしかに変貌が著しいな……」

 

ヴォル「ハハハハ! 素晴らしいぞ! 久々に体が熱くなってきた! 私も本気を出そう!」

 

ビクス「勝負とは、最初から全力で挑むモノだ。このようにな!」

 

【剣戟の音】

 

ヴォル「ぐっ、なんという力だ……!」

 

ビクス「ぬああああ!」

 

ソーダ「ビクスちゃん、すごい……アタシより強いかも」

 

ロード「かもじゃない。強いんだ」

 

ソーダ「うっさいわね」

 

ロード「ソーダよ、お前も例の力を試せば良いものを……せっかく空の上で教えたというのに……」

 

ソーダ「んなこと言ったってさぁ、向こうが剣技で挑んで来たら乗っかっちゃうじゃん?」

 

ロード「単細胞な奴だな、お前は」

 

ソーダ「アンタのその減らず口、削ぎ落してやろうか?」

 

ヴォル「ぬぅっ、ならば奥の手! 我が地獄の炎を受けてみるがいい!」

 

【炎の音】

 

竜「むぅ。奴め、この近辺を焼け野原にするつもりだな」

 

ビクス「チッ! なかなかの魔力……!」

 

ロード「姫様っ! お下がりください!」

 

ソーダ「馬鹿ね、下がっても一緒でしょ?」

 

ロード「じゃあ、どうするって言うんだ!」

 

ソーダ「こうするのよ!」

 

ヴォル「手遅れだっ! くらえ、我が究極の――」

 

【凍るような音】

 

ヴォル「なっ?! 相殺……いや、かき消された?!」

 

ソーダ「へへー。そっちが魔法を使うってんなら、アタシも使っちゃうからね」

 

ヴォル「き、貴様のような小娘が、その桁違いの魔力をどこから……?!」

 

竜「竜の血を飲んだ人間は、無尽蔵の魔力を得る。純粋な魔法での戦いにおいて、ソーダに勝てる者などおらぬよ」

 

ビクス「ふっ。奥の手とやらも封じたのならば、あとは決着を付けるだけだな」

 

ヴォル「こ、この、ば、化物どもめぇ!」

 

ビクス「はああああ!」

 

ソーダ「やああああ!」

 

【斬撃の音】

 

ヴォル「ぐおおあああああ!」

 

竜「あれは同情するほどの戦力差だな」

 

ロード「なんておそろしいコンビ……」

 

ソーダ「よっしゃあ! このまま次よっ! 次ぃ!」

 

ロード「ひっ、姫様! どうぞ剣をお収めください」

 

ビクス「いや、父上の無事が確認できるまではこのままだ」

 

ロード「でっ、ですがしかし……!」

 

ビクス「案ずるな、無理はせん」

 

ロード「いえ、そうではなくて……非常に、こわくて……」(※小声)

 

ビクス「さぁ、ゆくぞ! 続け、ロード!」

 

ロード「はっ、はい!」

 

ソーダ「おーう! その意気よ、ビクスちゃん!」

 

【歩く音】

 

竜「……奴らめ。我のことなど、すっかり忘れておる……。礼くらい言わんか……」

 

 

 

・チャプター⑦

※魔王城内※

 

 

 

四天王1「ほう。炎帝のヴォルケノスがやられたようだな」

 

エスケプル「くくっ、奴は四天王の中でも最強……」

 

四天王2「我ら四天王の我褒め(われぼめ)よ」

 

四天王1「だがどうする? 残りの我らが束になっても奴らには勝てんだろう」

 

エスケプル「くくっ、私に考えがある……」

 

四天王2「ならば三十六計のエスケプルよ、貴様の策に期待しよう」

 

エスケプル「くくっ、任せよ……」

 

 

 

・チャプター⑧

※魔王城内※

 

 

 

【歩く音】数歩で止まる

 

ビクス「むっ?!」

 

ロード「姫様? いかがなさいましたか?」

 

ビクス「この扉の先から、ただならぬ気配を感じる」

 

ロード「では、この先に魔王が……!」

 

ビクス「おそらく……」

 

ソーダ「まっさかー。だってここまで誰一人見てないのよ? 最初のヤツは四天王って言ってたじゃん? 少なくともあと三人はいるはずでしょ?」

 

ロード「もしかしたら、全ての戦力を集めているのかもしれない……! とにかく、用心を怠るな!」

 

ソーダ「まー、今更なにが待ってようが関係ないけどね」

 

ビクス「むぅ……なぜかは分からんが、少しだけ懐かしい気分になる……」

 

ロード「きっと、国王の気配がしているのです! 違いありません!」

 

ソーダ「進めば分かるでしょ。ほら、ビクスちゃん行こうよ」

 

ビクス「ああ。その通りだ。行くぞ!」

 

【扉を開ける音】

 

【歩く音】

 

魔王「ふふ……若者たちよ、よく来たな」

 

ビクス「あれが魔王……」

 

ロード「くっ、なんて威圧だ……」

 

ソーダ「へぇ、美人さんね」

 

ロード「貴様をすぐさま倒し、そして国王を返してもらうぞ!」

 

魔王「ふっ、威勢がいいな……だがその前に、これを見ろ」

 

ソーダ「なにあれ? 手紙?」

 

ロード「気を付けろ! 強力な魔法を封じた札(ふだ)かもしれない!」

 

魔王「これは四天王たちの置手紙だ」

 

ソーダ「ほら、手紙じゃん。なーにが「気を付けろぉ」なのよ」

 

ロード「うっ……」

 

ビクス「それよりも、置手紙だと? どういうことだ」

 

魔王「読み上げてやろう」

 

【紙をめくる音】

 

エスケ「魔王様、いつもお世話になっております。魔王軍四天王が一人、エスケプルです。さて、此度の侵入者たちですが、ちょっと強すぎて笑えません。我々では手に負えません。ということですので、私を含めた四天王は田舎に帰らせていただきます。急な申し出ですみません。というよりも、許可もなく去ってしまうことを心より謝罪いたします。それでは、魔王様の今後のご活躍をお祈りしています。四天王一同」

 

魔王「とのことだ」

 

ロード「いや、とのことだと言われても……」

 

ビクス「我々に気付かれることなく敵前逃亡か……ある意味で有能な奴等だな」

 

ソーダ「まぁ、そんなことはどうでもいいわ! 残ってるのは魔王一人ってことでしょ? それなら、さっそく勝負よ!」

 

魔王「ふっ、血気盛んな小娘だな……貴様、名は?」

 

ソーダ「アタシはソーダ! ソーダライト・ディセンバーフォウス! 自しょ……勇者よ!」

 

ロード「ああ、魔王の前では言い切るんだな」

 

ソーダ「うるさいっ! せっかく決めたところなのに!」

 

魔王「ふふっ、面白いやつらだ……よかろう……妾が相手をしてやる……」

 

【武器を構える音(シャキンッ、など)】

 

ロード「くっ……」

 

魔王「と言いたいところだが、今日のところはお引き取り願う」

 

ソーダ「はぁ?」

 

ロード「くっ、魔王め。俺たちを馬鹿にしているのか……」

 

魔王「いや、そうじゃなくて。馬鹿にはしてないの。妾もちょっと疲れてるし、貴様らが予想していたよりも遥かに強いから……」

 

ビクス「ならば父上を返して貰おうか」

 

魔王「ふっ、王ならもう返した。じきに城へとたどり着くだろう」

 

ロード「まっ、まさか、亡骸を届けたとか……」

 

魔王「案ずるな、ヤツは元気だ。傷一つつけてはおらん」

 

ソーダ「ちょっとちょっとちょっと! それじゃあ、アタシは何のために魔王城にまで来たって言うのよ!! 世界最強の魔王と戦うために来たのよ!」

 

魔王「残念だったな。今は戦う気など毛頭もない。ほれ、さっさと帰るがよい」

 

ソーダ「だったら日を改めて、やる気の出た日に勝負よ!」

 

魔王「やだ。断る。御免こうむる。貴様は特に面倒だ。世界最強なんて肩書きはくれてやるから、さっさと帰れ」

 

ソーダ「なによー! ふざけんじゃないわよー! こんな終わり方はやだー!」

 

ロード「お、おい、駄々をこねるなって。しょうがないだろ」

 

ソーダ「だってだってだって、納得いかないもん!」

 

ビクス「ならばソーダ。次なる目標が決まるまで、私と剣技に励むか?」

 

ソーダ「えっ? ビクスちゃん、相手してくれるの?」

 

ビクス「私はいっこうに構わん。どうする?」

 

ソーダ「行く行く、いっきまーす! ビクスちゃん強いけど、魔法なしで勝っちゃる!」

 

ビクス「ふふっ、その道のりは険しいかもしれんぞ?」

 

ソーダ「いいよいいよ、全然いいよ! むしろその方が燃えるじゃない!」

 

ロード「姫様! あなたにそんなお暇は……!」

 

ビクス「暇がないというならば、作るまでだ。私は自分の発言を曲げたりはしない!」

 

ソーダ「きゃー、ビクスちゃんイケメンっ!」

 

ロード「はぁ……こんなヤツとはこれっきりだと思ったのに……」

 

【剣を収める音(カチャンッ、など)】

 

ビクス「さて、それでは皆さん、帰りましょー!」

 

ソーダ「おー帰ろ帰ろー」

 

ロード「あぁ、良かった……姫様がお戻りになられた……!」

 

ソーダ「ところでビクスちゃん。住み込みでもいいかな?」

 

ロード「お前、図々しすぎるだろっ!」

 

ソーダ「なーに言ってんのよ。王族なんでしょ? それくらいいいじゃない」

 

ロード「少しは控えろ!」

 

ソーダ「うっさい!」

 

ビクス「まぁまぁ、ロード。ソーダちゃん一人くらいならどうにでも……」

 

ロード「姫様は甘すぎます!」

 

ソーダ「ええーい! 面倒だ! もうその首、撥ね落としてくれるわぁ!」

 

ロード「うわっ、ばかっ! あぶなっ! 何考えてんだー!」

 

【走る音】

 

ソーダ「待てこらー!」

 

ロード「この、あほ勇者!」

 

ビクス「二人共ー! 元気が良すぎるよー!」

 

【扉の閉まる音】

 

魔王「ふぅ、やっと行ったか。うーん、それにしても、まさか自分の娘があんなにも成長していたとはなぁ……強い仲間も連れてきて……小さい頃のビクスが懐かしい……。そろそろあの子だけにはホントのことを言ってもいい年頃かな……ああん、でもそんなことよりも、もうちょっとパパとイチャイチャしたかったー!」

 

竜「なるほど、そういうことか。魔王のくせに、人間の王と……」

 

魔王「念話か。人の頭の中をのぞき見とは、いい度胸だな。竜の分際で!」

 

竜「まぁ、お前の子を少しでも面倒みてやったのだ。感謝くらいはしてほしいな」

 

魔王「恩着せがましい奴め……」

 

竜「あの子らはどうするのだ? まさか魔王にするわけではあるまい?」

 

魔王「さあ? それはビクスが決めることだからな……ところで、妾はこの地を離れられん。貴様も少しは子供たちの行く末を見守ってやってくれないか」

 

竜「ふぅ、やれやれ。奴らは少々あぶなっかしいからな。よかろう」

 

魔王「ふふふ……さてさて、いったいどんな未来がやってくるのやら……」

 

 

 

・チャプター⑨

※城内※

 

 

 

ロード(ナレ)「そして後日」

 

ロード「ソーダ! お前! また姫様を勝手に連れ出して!」

 

ソーダ「ちょっとくらい、いいじゃん! 剣技のれんしゅーよ!」

 

ロード「頻度が多すぎるんだ! それに、姫様は学ぶことがたくさんあるお方なんだぞ! お前のような暇人とは違ってな!」

 

ビクス「まぁまぁ、ロード。今日はそれくらいに……」

 

ロード「いいえ! 今日という今日は許しません! それに姫様もアイツを甘やかすから……!」

 

【雪玉がぶつかるような音(ぼふっ、など)】

 

※魔法で雪玉を作ってロードの顔面にぶつける※

 

ロード「うぐっ!?」

 

ソーダ「見て見て見てー、調節して雪玉作れるようになったのー!」

 

ビクス「わぁ、ソーダちゃん、すごーい」

 

ロード「そ・お・だああああ!」

 

【走る音】

 

ロード「今日こそ、お前をこの地から追い出してやる!」

 

ソーダ「やれるもんならやってみなー!」

 

ビクス「あわわ、二人共、もっと仲良くしなきゃー」

 

竜「やれやれ……この世界の未来は本当に大丈夫なのか……?」

 

ロード「待て、ソーダ! 止まれ!」

 

ソーダ「のろいヤツが悪いんだろー。止まって欲しけりゃ止めてみろー」

 

ロード「こんのー!」

 

ビクス「あーん、置いてかないでー」

 

End

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